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リハビリで使える「痛み」の聞き方・伝え方

リハビリで使える「痛み」の聞き方・伝え方

臨床セラピストをやっていて、患者さんの主訴として最も頻度が高く、対処すべき優先度が高いものが『痛み』だと思います。

そこで、私が普段、『痛み』の評価をどんな風に行っているかを、簡単にお伝えします。

また、痛みを抱えている方に向けても、どういうポイントで医療者に痛みを伝えれば良いか、という視点もできるだけ含めて書こうと思います。

 Step1

まず、生命に関わる緊急性が高い痛みかどうかを判断します。

生命に関する痛みの代表的なものとして、心筋梗塞、くも膜下出血や脳梗塞などの脳血管疾患、肺塞栓症(エコノミークラス症候群)、気胸、虫垂炎(盲腸)、腸管イレウス(腸閉塞)などが挙げられます。

内科や脳神経外科的な疾患によるものが多いです。これらが起きている時、意識レベルの低下や交感神経刺激症状として発汗や嘔吐、手足の麻痺や呂律難などが伴うため、明らかに異常であることがすぐに分かると思います。消化器系の疾患であっても、腹膜炎から敗血症(菌が血液に入ってしまう)などのおそれもあり、これらの場合は、すぐさま救急コールが必要です。

 

Step2

次に、それらを除外した、主に整形外科的な要因による痛みについて評価します。

聞く側の人は、まずは聴取を中心としたスクリーニングとして、アルファベットの「OPQRST」に沿ってポイントを絞っていきます。

痛みを伝える側の人は、このポイントに沿って痛みを伝えると、聞く側の人が原因を探索しやすくなりますので参考にしてみて下さい。

「Onset」・・・いつから痛むのか

「Ponit」・・・部位、どこが痛むのか

「Quality」・・・その痛みはどんな性質か

「Radiation」・・・まわりに放散するような感じはあるか

「Strong」・・・痛みの強さはどの程度か

「Timing」・・・頻度や、どんなタイミングで痛むか(必要なら疼痛誘発動作)

Pを「Palliative/Provocatiy」・・・増悪・寛解因子、としている説明もありますが、分かりにくいため、私は「Point」としています。

 

■Onset

いつから痛むのかを聴取することで、急性期の痛み(3日~2週間以内)か、慢性期の痛み(3週間~1か月以上)かをまず判断します。特に急性期の痛みであれば、痛みが始まった時点における、何か思い当たるようなきっかけがあるかを聴取します。例えば「転倒したか?」などです。そうすることで、受傷起点や、受傷時の姿勢などからストレスのかかり方による骨・筋をはじめとする軟部組織への損傷を確認します。

骨折などはこの項目で抽出できます。そして、ここで痛みの原因から骨折が除外されると、残る痛みの種類としては、骨折以外の整形外科的なものの可能性が高くなります。

慢性的な痛みであれば、既往歴(いままでかかった病気)や今までの生活における姿勢の崩れ(アライメント)などを確認して、次の項の「Point」と相互的に評価して組織にいかなるストレスがかかっているかを大まかに予測します。

また、ここでは疼みが現在でも継続しているのかを確認しておきます。

 

■Point

できるだけ限局的に、例えば指1本で最も痛むところを示してもらいます。大まかな損傷組織や疼痛の原因となっている組織を把握します。

 

■Quality

痛みの表現方法は様々で、痛み自体も、経験や文化、教育歴、精神状態などによって修飾されます。そのため患者さんの痛みの表現をそのまま記載します。

痛みの性質により、ここでも痛みを発生している組織をある程度把握することができます。例えば、鋭い痛みであれば神経性の痛みかもしれないし、鈍い痛みであれば筋性かもしれません。今まで感じたことのある痛みのどれに似ているかなどを聞くのも良いかもしれません。

 

■Radiation

安静時に痛みを感じる場合は、まだ炎症が起きている可能性が高いです。炎症の5徴候とされる、「発赤(赤み)・腫脹(腫れ)・熱感・機能障害(動かせない)・疼痛」の存在を一緒に確認します。他の部位に拡がるような痛みであればその炎症が波及している可能性があります。

痛みの原因となる組織を大まかに同定したら、今度はその組織全体にも目を向けます。例えば、筋肉であれば、おそらく筋腱移行部が痛んでいると判断した時には筋の走行に沿って筋腹にも痛みがあるのか、過緊張が無いかなどです。解剖学を思い出し、筋の起始停止・どこから筋が腱に移行しているのか、靭帯がどこに付着しているのか、神経の走行はどうか、を考慮し組織全体を評価します。

 

■Strong

痛みの強さを、安静時、最大に痛む時など、状況に分けて聴取します。

NRS(Numerical Rating Scale)やVAS(Visual Analogue Scale)などの評価ツールを適宜使用して評価します。数値化することで経時的変化が追いやすくなります。

 

■Timing

どんな姿勢や動作で増強するか、また夜間痛など1日の中で変化はあるか、頻繁に痛むのかなどを聴取します。

以上の項目を一通り聴取ができれば、スクリーニングとして、痛みを発生している組織の同定や、痛みを誘発する動作、そしてどんな力学的な負荷がかかっていそうであるかなどを大まかに確認することができます。

今度は、さらに深堀りして考察していきます。

Step2とStep3で被っている内容がありますが、Step2と3は相互的に行ったり来たりしながら評価を進めていきます。

※ここから先は聞く側に焦点を絞って説明します。

 

Step3

まず、疼みを発生している「組織」について、Step2では大まかに把握する程度でしたが、今度はしっかりと推論し同定します。スクリーニングで得た情報をもとに、どの組織が炎症を起こしているのか、または損傷しているのか、どの条件下で痛むのかなどを再度確認します。

触診学組織解剖学の知識は必須です。アトラスやネッターなどの参考書に書かれているのは静的な解剖の知識です。どの関節角度で伸張または短縮位になるか、などのできれば動的な解剖についても勉強しておくと良いです。

組織の同定のために、整形外科的Special Testも併用します。棘上筋の損傷における「empty can test」、仙腸関節性の疼痛のための「Newton test」などです。

これらは総じて「組織学的推論」と言われています。

「組織学的推論」が済んだら、今度は痛みを誘発している組織に、どんな「力学的ストレス」がかかっているかについて考察します。「力学的ストレス」には、大きく分けて『圧縮』、『伸張』、『剪断(せんだん)』、『摩擦』などがあります。

姿勢アライメントの評価や動作分析(起立動作や歩行)から、ほとんどの場合は、着目している組織にどんな力学的ストレスがかかっているかをある程度は把握することができると思います。例えば、膝関節内側の痛みがある患者の歩行を分析した場合、立脚において膝が内反していれば、内側膝関節には『圧縮』ストレスがかかっているということが分かる。あるいはTKAオペ後の患者で、膝屈曲時に膝蓋骨下方に疼痛がある場合には膝蓋腱や膝蓋下脂肪体に『伸張』ストレスがかかっているということが分かる。といった様にです。

より的確に判断するため、あえてそのストレスが強くなるように徒手あるいは動作誘導し、ストレステストを行ったりもします。「疼痛誘発動作」と言っている臨床家の方々もいます。

ここでは運動学的な知識や視点が必要となってきます。

今度はこれらを総じて「力学的推論」と呼びます。

 

Step4

「力学的推論」が済めば、最後に普段の動作などから、習慣的に力学的ストレスがかかるような動作を行っていないかを評価していきます。実際に動作を確認すると、どこかしらは必ず異常な姿勢や動作を行っていることに気づきます。

異常な姿勢アライメント(マルアライメント)や異常な動作方法が発見できれば、それがなぜ起きているのか、なぜその動作方法をとらなければならないのか、つまり周辺関節の筋力低下や可動域制限といった機能・構造障害が原因となっていないかをしらみつぶしに評価していきます。

ここまで評価したら、痛みを改善させるフェーズに入ります。徒手療法や物理療法などで、標的となる組織自体に療法を施したり、力学的痛みが軽減するような習慣動作の是正を行っていくという流れになります。

しかし、評価が終わった訳ではありません。評価と治療は表裏一体の関係です。セラピストが行った療法によって、痛みの「OPGRST」のいずれかが変化したかをしっかり評価し、その反応によって療法の方向性をさらに軌道修正していきます。

仮説を立てて、それを検証する。変化が無ければまた新たな仮説を立てて検証・・・というこの過程を繰り返すことで、痛みの原因に近づくことができます。

以上、私が実践している痛みの評価方法についてでした。参考程度にご覧ください。

他にもこういった視点で評価すると良いよ、とかここは違うんじゃないかなという点があれば、是非コメントでお伝えください。

閲覧ありがとうございました。

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