病院グループ内異動のため、良いか悪いか、これまで生活期・回復期・超急性期の病院でそれぞれ3~4年間もの年月をリハビリテーション職として勤務してきました。
リハビリテーションって何をする仕事なのか?
そんな疑問について簡単に私の考えを述べていきたいと思います。
この記事は以下のこんな人に向けて書いています。
- これからリハビリテーション関係の仕事に就こうか迷っている方
- 実習を控えている学生
- 病院で勤務しているけれど、リハビリってどんなことしてるのか知りたい方
- 漠然と興味がある方
リハビリテーションのイメージは「訓練」
リハビリに対する世間のイメージは、入院したりケガをしたりして患者となった方々が、元の生活に戻れるように一緒に運動したり、歩いたりする仕事というものだと思っている方が多いのではないでしょうか。
それは間違いではありませんが、その説明は狭義の意味合いであり、本来のリハビリテーションの一部分しか捉えられていないことになります。
真面目な話は嫌いなので、この辺の説明は他のサイトやブログで読んで頂ければ良いですが、「リハビリテーション」の語源はラテン度で「re-habilis」、つまり「人間らしさの再生」という意味になります。
言い換えるならば、人間らしさというところが難しいですが、訓練だけがリハビリなのではなく、「元の生活に戻れるようにする働きかけの全て」がリハビリテーションなのです。
ですので、医師の投薬も、看護師の点滴も、介護士の介助も、ソーシャルワーカーの在宅調整も、広義では全てリハビリテーションとなります。
様々なガイドラインなどでも「包括的リハビリテーション」という言葉が出てきますが、こういった概念の元、患者を元の生活に戻すための行いの全てを示しています。
これが本来のリハビリテーションの意味です。
冒頭にある、入院した患者が歩けるようにするために行われる、世間一般的なイメージの歩行訓練などは「狭義のリハビリテーション」であり、それはつまり病院などの医療機関で行われる機能改善のための機能訓練です。これは「医学的リハビリテーション」と呼ばれ区別されることもあります。
どんな仕事かを概念から考える
英語でリハビリテーションは「re-Habilitation」と書きます。
「re」は再生、「Habilitation」は習慣を意味し、リハビリテーションの意味は「習慣の再生」つまり「再習慣化」です。
入院するということは、身体のどこかに普通の生活では是正できない何かが起こり、それを改善させるために特別な処置を施されるイベントになります。
これは人生における大きなターニングポイントの1つです。
その時に適切な処置が行われれば、その後の人生を良い方向へ舵を切ることができますが、一方で適切な処置が行われても改善が得られなければ、元の生活に帰ることができません。
リハビリテーション職は、この人生のターニングポイントにおいて患者に密接に関わる仕事になります。
入院期間の間に、患者のリハビリテーションをするということは、つまり、「生活を再習慣化」させることです。
嚙み砕いて言うならば、入院するに至ってしまった習慣を是正させ、新しい人生の習慣を獲得させることが、リハビリテーション職の真髄であると私は考えています。
転倒してけがをしてしまったとしたら、それは転倒するような身体機能・周辺環境で生活していた結果であり、それを是正する。
心筋梗塞で入院して冠動脈インターベンションをしたのなら、再発しないように心筋梗塞が発生するに至った生活習慣を是正する、という風にです。
また、これは何も入院期のリハビリテーションだけではなく、訪問看護ステーションや施設においても、「(医学的)リハビリテーション」を標榜する部署であればどこでも「生活を再習慣化させる」という概念が非常に重要です。
役割から考える
また、意外と忘れがちですが、医学的リハビリテーションは、医師や薬剤師の処方する薬や、外科医の施す手術などと同じように、「治療の1つ」です。
筋力や歩行能力であったり、高次脳機能と呼ばれる認知機能や注意機能であったり、飲み込みの嚥下機能などは、処方される薬では治せません。
それらの薬では治せない部分を治療していくのが理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士などのリハビリテーション専門職の仕事になります。
近年ではサルコペニアやマイオカインなどで「筋肉」は臓器としても再注目されていますし、ニューロンの可塑性は脳外科医でも操作できません。嚥下機能も手術で良くすることはできません。そういった医師でも対処できない分野の専門家は、他ならぬリハビリテーション職なのです。
リハビリ御三家(理学・作業・言語聴覚療法)の役割
理学療法士と作業療法士の違いがよく分からない医療スタッフも多くいらっしゃいます。
出典は失認しましたが、どこかのサイトにとても分かりやすい説明が書いてありました。
ご飯を食べる時に、ご飯を食べる場所まで行けるようにするのが理学療法士、ご飯を食べるための動作をできるようにするのが作業療法士、ご飯を食べる(飲み込む)という機能を改善させるのが言語聴覚士です。
おわりに
概念がぼんやりしているため、世間一般から見たイメージは「訓練」というある種体育会系的なフィジカル面ばかりが突出したものとなってしまっていますが、一般的に想像される以上に難解な職種であり、その分とてもやりがいのある仕事ではあります。
エビデンスファーストの現代では、その「戦略」ばかりが注目されますが、セラピストの「愛」や「熱意」を織り交ぜた方法論で患者に向き合うことが信頼関係を育み「生活の再習慣化」を促すことに繋がると考えます。
療法士の人口が激増し、淘汰される社会はいずれ来るかもしれませんが、AIじゃ絶対にできない仕事がここにあります。
もしこの記事を読んだとしたらそれも何かの縁。
是非今後のリハビリテーション業界にチラッと意識を向けてみて下さい。