京都、叡山電鉄に揺られて終点の八瀬比叡山口駅で下車、高野川に沿って数分下ると「琉璃光院」へ辿り着きます。
春夏には緑、秋には紅葉に染められた寺院で、自然に飲み込まれるような不思議な感覚を味わうことができます。
瑠璃光院とは
インスタなどSNSで机に反射する紅葉で一躍有名となったこの寺院。
「瑠璃光院」とは、明治時代の実業家である田中源太郎が建てさせた元々は別荘であり、当初は「喜鶴亭」と名付けられました。
大工である中村外二によって数寄屋造りという建築様式で建造されており、緑が生い茂る有名な庭園は名跡を佐野藤右衛門一派によって施されています。
数寄作りとは、簡単に言うと茶室風な造りのことを言います。
以下wikipediaからの引用です。
数寄屋大工が造る木造軸組工法。
数寄とは和歌や茶の湯、生け花など風流を好むことであり、数寄屋は「好みに任せて造った家」といった意味で茶室を意味する。書院造りによる建築が重んじた格式・様式を排除しているのが特徴で、装飾ではなく内面からもてなすという茶人の精神を反映している。
特徴としては、竹や杉丸太などを好んで使う、長押の省略、小規模で質素、数寄造同士でのデザインの統一性が無い、深い庇により静謐さを醸す、襖・障子・板硝子などの建具が多彩である、などである。
所有者が移り変わり、一時は「喜鶴亭」という旅館としても機能していました。
その後、岐阜の光明寺により買収され2005年に寺院となりました。意外に近代の建物ということです。
バス、ケーブルカー、鉄道、タクシー、自家用車など色々なアクセス方法があるかと思いますが、時間に縛られにくく金銭的にも易しい鉄道で私は行きました。
京都駅から直通の電車が無いため、トランスファーします。面倒臭いですが、観光地で乗り換えがあると客がそんなに多くならない印象にあるのでかえって好都合かもしれないと思いながら電車に揺られていました。
京都駅からJR奈良線に乗って東福寺駅へ、そこから京阪本線で出町柳駅、そこからさらに叡山本線で八瀬比叡山口で下車します。
長い。ですが道中は終始座れないことはなく、午前の早い時間帯であった影響もあるのかむしろ電車内は空いていました。
私の場合は1人で行きましたが、2人以上の観光客が6割、ソロが2割、地域の方が2割程度といった様子でした。
旅行記
2019/06/10。
瑠璃光院には6月に訪れました。毎年、春と秋に一般公開されているので訪れる場合は日程の確認が必要です。
梅雨真っただ中であったため、当然のように雨。
叡山電鉄を八瀬比叡山口駅で下車し、人の流れに従って高野川を渡り、右へ川に沿って歩いていきます。看板が分かりづらいので迷いそうになります。
道なりに沿って歩いていくと漆喰の塀が見え、これか?と思いましたがこれは美術館。
もうしばらく5分くらい歩くと到着しました。
青もみじに侵食されんばかりの門構えはヒト2人がギリギリ通れる程度の幅であり、想像以上に入口が小さいです。
ちなみにこれは帰途で撮った写真であり、往きは全く並ぶことなくスムーズに通過。そのため瑠璃光院を訪れる際はやはり午前の早い時間帯がオススメです。
門を過ぎ、参道へ歩を進めます。
緩やかな坂。スニーカーなどで来た方が良いでしょう。
建物の中は通路が指定されており、それに従うと一通り寺院の中を見て回ることができるようになっています。
矢印の示す方へ従って進むと、いきなり瑠璃光院の目玉ともいえる2階の書院、誰が言ったか通称「机の間」へ。
院内全体を通して図書館よりも静かな空間が佇んでいますが、机のまわりではここぞとばかりに響き渡るカメラのシャッター音。
ある人はここを訪れてその美しさに時間を忘れたり、はたまた何かを得て帰るために思いに耽ったりし、またある人は有名なスポットに訪れたという経験をレバレッジの効いたインターネット上で誇示するためにシャッターを切り続けます。
瑠璃光院の紹介サイトやブログなどでは、晴れた日や紅色になった紅葉を反射させた写真が多いですが、曇りや雨であっても青もみじが綺麗に映えています。
屋根の位置などが計算して造られているのか、曇りであっても屋内に届く日の光が少ないことで、屋外にある青もみじの庭と、屋内にある机とのコントラストが強調されています。
冒頭にも書いたように、瑠璃光院の建築方法「数寄屋造り」は、内面からくつろぎもてなすという精神思想に基づいているとのことですが、瑠璃光院の中でも特にこの部屋を訪れる多くの人は前述のようにアクセサリーとも言うべきSNS用の写真を撮ることが目的かと思われます。
庭の青緑と机の漆黒によるコントラストのほかに、そういったこの「書院が建てられた本来の思想」と「人々の思惑」とのコントラストも楽しめました。
かく言う自分も人波をかき分けてベストポジションをむしり取り、ばっちりカメラに収めましたが。
ここでの撮影会が終わったら、隣接する部屋で写経を楽しめます。
御朱印やオリジナルペンがもらえます。
その後は再度1階に降りていきます。
途中には「八瀬のかま風呂」というお風呂があります。
風呂と言っても現代で言うところのサウナや岩盤浴に近いものです。手間はかなりかかったようですが。
壬申の乱にて、背中に矢傷を負った大海人皇子がここで傷を癒したことから、この地は八瀬(矢背)とも言うらしいです。
現代のサウナブームにも繋がるため、自称サウナーを謳う方は是非一度訪れてみると良いでしょう。
公式サイトによると、瑠璃光院が所有している寺宝の数々を毎年数点ずつ展示しているそうです。行ってからのお楽しみというところです。
1階からは美しい庭園を間近で鑑賞することができます。
瑠璃光院の主庭である「瑠璃の庭」。
瑠璃色に輝く極楽浄土の世界を表現しているとされ、青々とした苔が敷きつめられています。
瑠璃色とは深い青の様な色のことです。
新緑の頃に「雨露で濡れた苔にある特定の角度で光が差し込むと瑠璃色に輝く瞬間が見られる」という云われもあるそうで、屋根の位置関係などで屋内に取り込む屋外の光量と同様に、おそらくそれも計算されて造られています。
それにしても理屈無しに魅せられます。
質素なのにここまで美しさを表現できる「わびさび」の精神は日本の誇る文化の1つであると強く感じました。
もう1つ「臥竜の庭」という池泉庭園がありますが行くのを忘れていたので、次回訪れた時の楽しみにとっておきます。
手入れが大変そうなので自分の家の庭はこんなに豪華でなくて良いですが、これほどまでに美しい光景を四季折々で楽しめたとしたら幸せですね。
新しい靴を買ったり、部屋の模様替えをしたり、そういった小さな変化もとても大事ですが、普段の生活の中では決して経験できないような「圧倒的な」経験をすると、人生における考え方や生活の見え方が大きく変化していきます。
そういった意味で、旅行は大金を払ってでも行くべき有意義な体験であると考えます。
今回は、瑠璃光院にて「圧倒的な美しさ」に触れることができました。
旅行日 2019-06-10